應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

伝説のエール  - 春合宿 2 -

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* 2年時の春合宿。筆者は右から2番目。辛い合宿だったが、身体をぶつけ合うカバディは良き思い出だ。

 

 若き幹部の悩み 

新年度の春合宿は、新幹部にとっても初の大仕事。僕が幹部となった春も 緊張を感じていました。当時の僕は団長。全てが自分の指揮一つで決定され、その判断を諌める者もいない。気負いを捨て、自分が経験した練習をやらせればいい…自分にそう言い聞かせていました。

この時ほど、同期のリーダー部がいない重みを痛感したことはなかった。

 

叶うのなら僕はリーダー部長になりたかった。組織の舵取りから一歩退いて 後輩と一緒に汗を流し、声を上げ、自分の背中を見せながら団を引っ張りたかった。

リーダー部長は練習の鬼。その職責は、試合よりも練習で発揮される。団員から一番嫌われる役回りだが、下級生たちの成長を身体で感じられる。僕は言葉も少なく誤解されやすい性格だから、適任だったでしょう。

 

鼓手隊 ( 太鼓 ) や 親衛隊( 旗手 )については門外漢の僕でしたが、彼らも指導しなければならない。時に彼らの技量に感心しながらも『 旗礼の角度が浅すぎる 』とか、『 鼓手のリズムだけで先行するな 』とか尤もらしいケチをつける。

自分の指導に自信などあるはずもなかった。団長と呼ばれることに慣れるまでは、どこかで自分の指導を疑ってばかりだった。

 

 

目立ちたがる年頃 

悩みを深める一方で、新幹部たちは春合宿であれこれ試したがる。従来の練習を踏襲しながらも、つい自分の色を出そうとしてしまう。それは自分達で考案した独自の筋トレ法だったり、本やTVで聞きかじった練習だったり。

 

2期上の幹部たちは、バスケ部から教わったという筋トレ法を導入しました。その一つに “ アザラシ ” と呼ばれるものがありました。腹這いになって上体を起こし、両腕だけで延々と地面を這いずり回る筋トレです。

ついでながら その年の春合宿直前、ニュース番組で法政大学応援団の春合宿風景が放送されました。当時の法政団長は、我が団OBのご子息。それを見た幹部たちが 対抗意識を燃やしていたのを覚えています。

 

このアザラシ練習に黙っていなかったのは 僕の1期上の先輩方。

『 こんな練習させやがって… 』と憤りが収まらない。

準幹部を目前にして、海洋哺乳類の疑似体験をさせられたことが頭に来たのでしょう。

 

そんな彼らの年には、カバディが行われました。これまでの合宿中では相撲をよくやらされたが、これは未体験。攻撃と守備に分かれて取っ組み合いをする格闘技です。攻撃側は 『 カバディ カバディ カバディ…』と発し続けるルールがある。

後輩たちは、ここを先途とばかりに小柄な僕に襲いかかる。勝敗は推して知るべし。最後は幹部も下級生もなく、全員で総当り戦。全身の筋力・肺活量・闘争心、その全てを一度に養い得る貴重な時間でした。

 

 

 W大応援団の故事 

僕が団長を務めた春合宿では、特に変わった練習は行いませんでした。無論 プライドが傷つくカバディなどやろうはずがない。でも 自分たちのエールが届く距離を試してみたい と考えていました。かつて大好きだった漫画 『 魁!男塾 』 の一場面に、遙か遠く離れた仲間へエールを送る場面があった。それを再現したいと…

漫画に描かれたエールの名は 『 大鐘音 だいしょうおん。以下はその引用です。

 

その由来は

武田信玄上杉謙信との合戦に於いて

どうしても応援に行けず

苦戦に陥っている遠方の味方の兵を励ますために

自陣の上に一千騎の兵を並べ、一斉に大声を出させ

檄を送ったという故事に由来する

その距離はおよそ 25里

キロに直すと 100 km離れていたというから驚嘆の他はない

 

余談ではあるが、昭和15年の全日本大学野球選手権に於いて

W大応援団 のエールは神宮球場から池袋まで聞こえた

という記録がある

 

 民明書房 刊『 戦国武将考察 』より

 

応援団員なら心震わさずにはいられぬ有名な一節です。エピソードの真贋はどうでもいい。その年の合宿地は山中湖…ここなら再現も可能だろう

最終日の練習を終えた感慨もそこそこに、僕は周囲の地図を確認してみる。宿舎から団員を二手に分け、それぞれの湖岸からエールを送り合うことを計画しました。

 

携帯電話で位置を確認をしながら、僕らはそれぞれの対岸に到着。その距離2km超。そしてエールを送り合いました。お互いの姿は視認できなくとも、エールはしっかりと届きました。田舎の静かな黄昏時を思えば当然かもしれないけど。

 

…僕ら全員の名前が 春の湖に次々と行き交う。

少年漫画に感化された幹部のエゴと笑われるかもしれない。なれど湖畔の清澄を醒ますエールには、気高い感動がありました。

 

手さぐりだった幹部としての船出。不安は手応えに変わり、最後の1年間が始まる。