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應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

勇者の衣

団の日常 所感・雑記

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 捨てられない服はありますか? 

僕の家のクローゼットには、3着の “ 制服 ” が眠っています。一つは高校時代の濃紺の学ラン。それから大学応援団での下級生時のもの。最後に、幹部時に1年間だけ着る用に作ったものです。女性の場合は、制服を大切にとっておく方も多いかもしれません。しかし男性では  趣味として女学生や職業系のそれを収集される御仁を除けば、 少ないでしょう。

 

季節の衣替えや、よそ行きのスーツを取り出す際には、クローゼット奥深くをあさります。当然、学ラン達と目が合ってしまうこともしばしば。物言わぬ彼らと心の語らいが始まり、つい時間を忘れて… ぼんやりしてないで早くしなさいよ !!  と嫁さんに怒られて我に帰ります。往時の応援団も嫁さんには頭が上がらない。今や厳重に管理すべきは、団旗でも太鼓でもない…油まみれの換気扇 & 猫のトイレ掃除係という大役を拝命している次第である、嗚呼。

 

…さて野球の春季リーグも終わりに近づいた頃、先輩に連れられて学ランの新調に行きました。場所は世田谷区の 洋服の並木。 この店名を聞いてニヤリとされる諸兄は多いことでしょう。店に入ると、所狭しと並べられた学ラン、キラキラのステージ衣装、英国紳士彷彿たる本格スーツ…そこはまるで映画の衣装倉庫でした。そして奥から出迎えてくれたのは、意外にも優しそうな店主ご夫婦。今年の新入生だね、と。オーダーメイドなんて初めての経験です。どうしたらいいか分からない僕に、ご夫婦は引き渡し前の完成品を見せて下さいました。

国士舘大学の方は  護国尊皇  立教大学の方は  血と名誉  の刺繍が…インパクト満点の文言は、この年齢になった今も忘れられません。いずれも応援団の方の品でした。それぞれのカラーよろしく、抜刀隊 vs 十字軍 の様相です。

ご夫婦は採寸しながら「 サイズは少し大きめにするといい、特に肩や腕回りは太くなるから… 」、そうアドバイスして下さいました。どの大学応援団も同じに見える学ランですが、それぞれに個性があります。上衣の丈、ボタン or 蛇腹、ポケットの切り方、切羽(袖ボタン)の数、襟の高さ、ズボンの太さ…それらの上に個人の趣向が反映されます。ご夫婦は各校の仕様を詳細に把握されており、このことにも大変驚きました。

 

 

 学生服概論 

袖ボタンは5穴 ( 下級生は袖ボタン4つ + 一番上の袖穴はボタンを付けない、幹部の袖ボタンは上下両端2つのみ )

襟高は 5.5cm、 上衣丈は長め、 ズボンは太め( “ ドカン ” ほど太くない )

大学名の横に連盟名も入れる

 

僕の団はこんな感じでした。応援団としては一般的なものです。実際は切羽と襟高を除けば厳しい規制もなく、先輩方もそれぞれの好みに仕上げていました。ただし短ラン・長ランは厳禁。短ランは中のシャツが見えてしまう、長ランはリーダーが綺麗に映えない、というのが理由でした。

オーダーに関してこだわりはなかったのですが、丈の長さなどは標準の学生服に近い形でお願いしました。大学名、氏名等の他は特殊な刺繍も入れず、裏地も黒。今思うと地味な選択です。当時で¥56,000- 。決して安い買い物でもなかったので、それが精いっぱい。ですが仕上がりを見て、とても気に入りました。以後長きに渡り 下級生時代の酷使に耐え、僕の身を守ってくれました。そして人生で最も大切な一着となりました。

 

余談ですが伝統ある高校や某国立大学で、短ランのリーダー部を見たことがあります。思った以上に違和感もなく、カッコ良かったです。

それから僕が知る中では、日体大の七つボタン、学習院成蹊大学の濃紺の蛇腹、防衛大学校の白ラン( 夏服?) が印象的でした。

 

 

思いのそばに 

3年を経て、再び新調しに行きました。痩せキュウリ同然だった僕が幹部として戻ったことを、お店のご夫婦は家族のように喜んでくれました。実は最近知ったのですが、ご主人は数年前に亡くなり、現在は奥様とご子息で経営されているとか。氣〇團を初めメディア関係にも深く携わり、さらに幅広い方々に愛されているようです。

 

学ランに限らず、人が大切にしているものにはドラマがあります。物と情報が錯綜する時代。安易に他人の持ち物や趣味をけなしたり、ネタにしがちです。思いはその人にしか分からない。サンプルとして見せて頂いた国士舘・立教の方々の学ラン達も、きっと今なお 主の思い出を守り続けているはずです。

 

実はこの記事を書いている途中、久し振りに写真の学ランを着てみました。刺繍部分には何故か青いもやがかかってしまいました。上衣もズボンもだいぶ大きく感じます。染み込んだ汗、団バッジや腕章を装用していた穴の跡。そして並木ご夫婦の優しさや、大変な中で僕ら姉弟を大学へ行かせてくれた家族のこと。それぞれがこの瞬間への道のり…。

今が幸せか不幸せかなんて、小さなことなのかもしれない。学ランを見つめながら、何だかそんな気持ちにさせられた今宵です。