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應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

春と修羅  - 春合宿 1 -

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* 河口湖畔での春合宿。一番左に頭だけ写っているのが筆者です。

 

長幼の序は重く 

大学体育会であれば、どの部も上下関係が非常に厳しいのは当然です。僕ら応援団では、その傾向はなおさら。長く苦しい下級生時代、僕らが一度は耳にする言葉があります。

 

  1年 = ゴキブリ  2年 = 人間

  3年 = 社長    4年 = 天皇

 

地域や時代で表現に違いがあり、1年=奴隷、4年=神様 と言われたりもする。僕らの序列はこの比喩に集約されている。とりわけ1年生の扱いが如何なるものか、これ程端的に示した言葉はないだろう。そして2年生と3年生の間にある圧倒的な隔り。4年生ともなれば、その威光は王権神授説のそれに匹敵する。

 

三月は春季強化合宿が行われます。それは理不尽さや雑用に振り回され続けた下級生たちに立ちはだかる最後の試練。2年生は単なる人間から社長さんへ、“ 準団員 ” だった1年生はゴキブリから人間に脱皮するため…僕らは合宿に臨む。 

 

 

 摂氏2℃の中で 

春合宿は毎年、富士五湖の近くで行われました。1年時の春合宿前、僕は先輩から宿泊予定のホテルのパンフレットを頂きました。そこにあったのは緑に囲まれた白亜の建物。清潔な客室とテニスコート、カラオケ完備の集会場、豪華な洋食ビュッフェ…悪くはなさそうだぞと。

 

迎えた合宿初日、空は灰褐色の暗雲が立ち込め、富士山は裾野がのぞく程度。強風が吹き荒び、白亜のホテルは悪魔城の佇まいでした。

日昼の最高気温は僅か2℃。その年の春は大荒れで、練習は極寒の中で敢行されました。毎日の朝夕には小雪がちらつく粋な演出付き。四季を通して冬が一番好きな僕ですが、この寒さには閉口しました。酷暑の夏合宿の方がなんぼかマシに思える寒さ。ヒーター付きの体育館が用意されたチアたちと同じ料金とは思えぬ扱いでした。

 

 

…この春合宿は1年生にとって特別な意味合いを持つ。それは “ 正団員になるため ” の試練だけではなく、幹部が適性とやる気を見極め、以後3年間の所属が決定されるからです。

僕ら学生服の団員( 広義のリーダー部 )は3つの所属に分かれています。応援の指揮・統制の中心に立つ リーダー部 、太鼓の責任者となる 鼓手隊 、団旗の旗手を務める 親衛隊 が存在します。

配属決定を下すのは、主にリーダー部長、鼓手隊長、親衛隊長といった専門職の面々。幹部らは各人の希望を事前に把握、春合宿中は幹部自らマンツーマンの指導も行う。そして任せられると判断されれば、1年生は希望が叶えられる。

 

 

花のリーダー部 

春合宿の前、僕も幹部に希望を問われました。そして真っ先に親衛隊( 旗手 )と答えました。ですが同学年の男子がいないことや、164cmしかない身長を理由に『 リーダー部決定だな 』とだけ宣告されていました。形だけの意思確認のみで、選択の余地はなかった。自分でもある程度分かっていたことなので、特に落胆はしませんでしたが…

 

僕は新幹部のリーダー部長が少し苦手だった。独特の勢いや江戸っ子口調があったからだ。この役職はどこの応援団でも鬼軍曹。しかも彼は 己の役職に限りない誇りを持っており、練習の激しさは予想以上。連日握力が無くなるまで、数時間に渡り鉄アレイを振らされる。しごく矛先が僕ばかりに向けられたことも災難だった。けれど直接指導を受ける内に、自分の気持ちが変わっていくのが分かりました。

太鼓や団旗と違って、身体を動かすだけの応援なら素人でも出来る。団経験者なら分かるかもしれませんが、リーダーに求められるのは、静中の動 と 動中の静 が見せる妙と切れ味。そして指先まで行き渡る集中力。美しいリーダーは統制の要だ。リーダー部長は彼の情熱やプライドを、全力で僕に注いでくれた。決して後輩を褒める人ではなかったけれど、師弟関係のような気持ちを感じた猛練習だった。

 

卒業を控えた旧4年生はすでに抜け、春合宿は3学年体制で行われます。人数も少なく、上下の距離感が近い中での練習は 春合宿の特徴です。指導は妥協を許さぬ厳しいものでしたが、彼の気持ちが詰まった形を継承させてもらえたことは、団生活を通して大きな財産となりました。

合宿最終日、2年リーダー部として正式任命された時は素直に嬉しかった。

 

 

冷たい仕打ち 

この合宿中、練習とは別に僕を苦しめたものがありました。それは上級生の衣類の洗濯。下級生当番は練習の合間を縫って、団員全員の洗濯をする。そして夜、先輩方の居室に綺麗にたたんでお渡します。しかし朝に干したはずの衣類は夜になっても乾かない。仕方なく屋外に一晩干していたら、靴下やトランクスは完全に凍り付いていました。

 

幹部が起床する前に、こいつらを何とか乾かさねばらない。その日から宿舎の方にドライヤーを借り、洗濯物に温風を当てるのが僕の日課に。もちろん自分の衣類は冷たく生乾きのまま着用。大概の雑用なら気にしませんでしたが、春合宿の洗濯物だけは情けない気持ちで一杯でした。

それは1年準団員としての最後のご奉公。今にして思えば、4年間で最も惨めな雑用のひとつだったかもしれません。

 

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* Go! Fight! Win ! Let's Go, CHUO !! チアのみなさん怒らないでね…2年時の春合宿最終日。後輩を従えてアホ面の筆者です。