應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

去る者 残る者

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* 静寂の多摩校舎。ここは団の勧誘出店が置かれた場所、すべてはここから始まる。

 

哀しき宿命 

学ランの新調は、応援団の新入生が胸を弾ませる出来事のひとつ。

黒装束に身を包めば、見た目だけは一人前の団員の出来上がりです。

 

僕らは世田谷の 洋服の並木 にお世話になっていましたが、法政大学・市ヶ谷校舎の地下テーラーに依頼する大学も多かった。僕の1期下の後輩たちは、そこで幹部服を新調しました。

学ランを新調しに来るのは、応援団だけじゃない。様々な大学の体育会学生が訪れる。僕の弟も、大学時代に並木でお世話になった一人だったりします。

 

でも悲しいかな、全員が部活動を全うして卒業する訳じゃない

並木のご主人がもらした言葉を僕は強烈に覚えている。

『 店に来た全員が4年間続きますようにって、仕立てるんだよ 』

 

優しさに満ちた言葉ですが、長年お店をされたご主人は、その難しさを理解されていた気がします。

 

 

 忍び寄る兆候 

僕らが入団して1ヵ月程した頃、同期の1人が 電話当番を交代してくれと頻繁に言うようになった。彼は資格取得を目指していた。きっと勉強が多忙なんだろうと思っていました。ところが暫くすると練習を無断欠席する事態に。

鈍感な我が身もさることながら、上級生の指示は迷いのないものでした。

『 あいつの話を聞いてこい 』

 

電話をしても応答がなく、駅に通じる校門付近で同期たちと待ち伏せることに。そしてようやく重い口を開かせました。

 

 ・苦労して大学に入ったのに、大学生らしいことが出来ない

 ・クラス ( =基礎ゼミ )に居場所がない

 ・団中心の学生生活で、親に心配をかけている

 

情けないことを言うなよと思いつつも、その表情は憔悴しきっていたことに驚きました。数日間見なかっただけなのに、げっそり …

僕らは引き留めようと必死。彼が戻りやすいように “ お前が必要なんだ ” とか “ 上級生も心配している ” とか何とか言ってなだめる。彼は練習のしんどさよりも、団員としての窮屈さに嫌気がさしていたようです。気持ちを真っ直ぐにぶつけるだけの言葉は、逆効果だったかもしれません。

 

 

 壮士一たび去りてまた還らず 

彼は翌日から練習に復帰したものの、再び雲隠れ。

そこで彼の自宅へ行くことに。見知らぬ住宅街を彷徨い歩き、チャイムを鳴らすと、お母さんが出て来た。事情はご承知でした。

『 ごめんね、ウチの子は皆さんとは一緒にいられないの… 』

 

母は強し。悪徳押し売り業者を見付けたような眼差しだ。彼はここまでだと分かりました。僕らは出来るだけの事をしたつもりだったから。

上級生に経過を報告すると、『 そうか、分かった 』とだけ。

彼らは決して腰を上げない。団員の進退は同学年で何とかさせるのが常でした。ありがちな連帯責任の懲罰もなかった。

 

応援団では辞めて行く者の意志は固い。表面化した時には、慰留はほぼ不可能。戻ってからの居心地の悪さもあるだろうが、思い詰めて去る者が多かったように思います。一方的な上下関係に、私情の余地はない。そして一人で悩み、一人で結論を出してしまう。

適切な例えではないけど、苦味しか残せなかった失恋に似ている。

この話題で他大学の仲間と話すと、どこも似たような状況でした。

 

 

 【 男たちの分水嶺 

団長に就任した春、1年時に退団した同期が幹部室に現れた。彼はもじもじしながら

『 俺を副団長にしてくれないか 』と。

 

目の上のたんこぶだった先輩連中が卒業した今、僕になら頼みやすいと思ったのでしょう。もちろん丁重にお断りしました。

同様のお願いごとをしてきたのは、さらにもう1名。数ヶ月とは言え、苦楽を分かち合った仲間の振舞いは、複雑な気持ちになりました。

僕が全力で引き留めていれば良かったのか、それとも団を安く見られていたのか。

一方で 所詮はそんな連中だと切り捨てられる程、僕は達観した気持ちを持てずにいた。

 

 

話は変わりますが、我武者羅應援團の代表者の方を思い出します。

高校時代に応援団を途中で辞め、ずっと後悔と未練を背負っていたという。今では大好きな応援団が仕事になったと語る。

 

人間の好みはそう簡単に変わらない。束の間と言えど、縁あって団の門を叩いた仲間たち。互いの立場に無理解もあったけれど、今なら応援団を笑って振り返ることが出来るだろうか。

 

団を離れた同期は3名。

後悔の過去ではなく、懸命になった日々を大切に思ってくれたら。

悪運良く団活動を全うした者の奢驕かもしれないが、そう願ってしまう。