應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

試練への前奏曲  - 夏合宿 0 -

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* 懐かしき練習場。僕らの血と汗と涙もここに。 

 

 大学2年、夏合宿を前に 

応援団で行われるさまざまな年中行事。その代名詞の一つに春季・夏季 の強化合宿があります。その年の夏も、恐怖の合宿が僕らに訪れようとしていました。

 

意外かもしれませんが 7月中旬から1か月の間、我が団はオフ期間。雑用や卒業生の会合へ呼ばれることを除けば、試合も練習もない。言わば夏休みでした。でもこれからの合宿を思うと、楽しいはずの時間も心から楽しめない。毎日のゴハンの味も半減する。決して誇張でもなく、それ程に合宿は過酷なものでした。

 

あれは大学2年の夏。自宅では24時間テレビの “ サライ ”  が流れていました。そんなTVの横で、明日から合宿本番かぁ…とため息まじりで荷造りしていたことは、誰にも言えません。巨人ファンで有名な某司会者が涙を流すのを見ても

『 …俺たちに比べりゃ、お前のはウソ泣きだよ

と一人吐き捨てた晩夏の夜。僕の学生時代の夏休みは、強化合宿の思い出一色です。

 

 

 地獄の扉 

合宿本番の2週間前に僕らは集合。合宿は大学内での  合宿前練習 から始まります。午前・午後合わせて7時間ちょっと。しごく時間はたっぷりあるので、幹部たちも焦りません。筋トレ中心の内容から、日を追って実践的な練習にシフトします。1年はサブ拍手のキレや反応に磨きをかけられます。

そしてこの合宿前練習中、来るべき合宿本番への覚悟を身をもって再認識させられます。2、3年生はそれぞれに課題を与えられ、合宿最終日の 総仕上げ練習 での披露を目指します。

 

前練習の間中、腕立て伏せを執拗にやらされたことは 鮮烈な記憶として残っています。普段の練習から慣れっこの腕立て・拳立てですが、この時は別物。オフ期間、娑婆っ気を吸い込んだ身体を覚ますには少々強烈でした。

我が団の練習場所は赤茶色のレンガタイル地。地面は触れるとものすごく熱い。真夏の陽射しに焦がされ、目玉焼きが作れるんじゃないかと思うほど。僕らは長時間、両の掌を焼かれながら身体を支えなければならない。

 

ちなみに腕立て中は、4名の幹部たちが金色ヤカンで水を撒いて回ってくれます。青春ドラマで、ラグビー部や野球部のかわいいマネージャーが『 毎日お疲れ様♪ 』 なんて言いながら運んでいそうなあのヤカン。

ヤカン係が むさ苦しい幹部たち じゃなく、女子マネージャーなら頑張り甲斐もあるのにと思ったりするが、僕らは応援団。足りない色気は妄想力でカバーする他ない。

 

掌と周囲に撒かれた水は、30秒と待たず蒸発してしまう。まさに焼け石に水。幹部たちは僕らの背中に馬乗りになったり、ヤカンの水を見せびらかすように飲んだり。終了する頃は、プルプルする両腕で支持しているだけが精一杯。汗か涙か、全身の水分が顎を伝い地面を濡らします。僕らは晴天をうらみ、曇り空や夕立ちの到来を、本気で待ちわびたものです。

 

終わりを知らない腹筋もなかなかでした。腕立て同様に、1時間以上続けるのは当たり前。でも本当にきつかったのはお腹じゃない。お尻の尾骨付近の皮が地面にこすられ、ズルむけになるからです。生傷が乾くと下着に張り付き超激痛。入浴時もしみしみで、湯船にも浸かれない日々が続きました。

帰宅後のお風呂上りには、傷がしみてなかなかトランクスをはけない。まっぱでうろつく僕の傷を見た姉(当時大学4年)が、「 あんた、大学で何やってるの !? 」 と呆れたりしていました。

 

 

師弟同行 

下級生同士がペアを組む 手押し車も毎日やらされました。コースは屋外プールの周回。1週250m程です。4組が出走し、1位のペアから抜けていく。途中の選手交代は自由。最下位ペアの手押し車は、約1,000m走る計算になります。僕らの間では “ 1位取り ” と呼んでいるやり方でした。

 

ペアの組み合わせは学年に関係なく グーパー ( じゃんけんのグーとパーで組を決めるあれです )で決めます。しかし…何故か毎日、僕と1年生のYくん がペアになる。大柄な彼は運動が苦手。小さな僕との体重差は40kg近い。マグロのように重い両脚をバタつかされ、長時間持つのは本当に大変でした。彼は体重の軽い僕を歓迎してくれたようですけど…。

どうせ何度やっても同じグーパーの結果なので、数日後には『 ほら、早く行くぞ!』と僕からYくんに声を掛けるようになっていました。

 

鈍重な彼の遅さは、毎回最下位をもたらしました。ですが不器用な姿が自分に似ていて、どこか放っておけない。手のかかる後輩ほどかわいいものです。お尻の皮だけじゃなく、僕とYくんは誰よりも掌がずたぼろになりました。

 

 

 好きな人ができました 

実はこの夏、僕の合宿前練習は だいぶ前に始まっていました。 特殊拍手 ( 他大では特殊リーダーとも呼ばれる ) の個人特訓が始まったからです。

それぞれの大学や高校の応援団には、伝統の 〇〇 の拍手 ” のような名前のリーダーが伝承されています。我が大学にも、拍手四本と呼ばれる4種類がありました。そのうちの一つを習得せよというのです。

当時の2年生は僕だけ。4年生たちは先のこと考えていたのでしょう。彼らにとっては学生最後の夏休み。それを惜しまず僕一人に全力で指導してくれた団長には感謝でした。

理由も告げられず電話で呼び出された時は「 またぞろ後輩が何かやらかしたかな? 」とビビったし、もちろん僕の夏休みも無くなってしまったけど…。

 

そして ヤカン係の女子マネを切望したあの夏…僕に素敵な彼女ができました。かわいくてかわいくて仕方ない。

彼女の名は 闘魂の拍手 。今次合宿で僕に与えられた課題こそが、こいつの習得でした。後にも先にも、4年間でこれ程に心血を注いだリーダーは無かったかもしれません。