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應援團戦記

大学応援団の日々を綴るブログ…あなたの大切な思い出は何ですか?

最後の戦い  - 箱根駅伝 1 -

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* 1999.1.2. 大手町にて。この日は僕らの引退戦でもあった為、他大同期・友人・家族・アルバイト先の皆さんが来てくれました。

 

 12月の僕ら 

12月、僕ら応援団は忙しい。さまざまな場での忘年会や祝勝会に出席し、年末年始に発送する大量の郵便物の準備( 箱根応援通知、年賀状、御礼状、幹部交代通知 …)にも忙殺されるから。さらに学期末試験やレポートにも、僕らは脅かされる。それらが済むと、一週間の 箱根駅伝前 特別強化練習 。この強化練習は、夏合宿並みに厳しい。幹部は最後の練習指導、3年生としても最後のしごかれる練習。それは例年、闘志と悲壮感の入り混じった特殊な雰囲気でした。

世間がクリスマス気分で高揚する季節です。しかし4年間で素敵な女の子と迎える聖夜などは、ついぞ訪れなかった…西洋の神様は不条理だ。全くモテなかった自分への言い訳には、団活動の忙しさは実に好都合でした。

そして僕らは1年間で最後の戦い、箱根駅伝 へ臨みます。

 

 

 払暁の大手町にて 

年が明けた元旦、僕ら下級生は上野のビジネスホテルに宿をとります。もちろん翌朝の箱根往路応援に備えての宿泊でした。

1996年 1月2日 僕らが大手町の応援場所に着いたのは早朝 4:00 頃。ものすごく寒い…歩行者もなく、他大応援団の姿は全く見当たらない。青白い月だけが、僕らを静かに照らしている。時折行き交うのは、TV中継のクルーばかり。“ 応援場所 ” と言えば聞こえはいいが、ここは日比谷通りに面したオフィスビルの公開空地。箱根未経験の僕は、本当に正しい場所にいるのかと不安になってしまう。

 

空も白む頃、周囲には他大応援団も勢揃いする。生中継を観ていた家族の話では、『 大手町に一番乗りの応援団は、中央大学応援団 でした… 』と実況アナウンサーが発したという。前夜からの苦労が、小さな言葉となって伝えられたのは嬉しかった。

 

スタートまで1時間と迫った午前 7:00。隣接する農大の旗手隊と、我が校の親衛隊が合図を送り合う…空の一点を刺す 緑と紫紺の団旗。僕らだけじゃない、他大学の全応援団も 一斉に応援を繰り広げる。

数時間前までゴーストタウンの様相を呈していたビジネス街。それが今、凄まじい音と歓声の圧力に包まれていました。観衆が周囲を覆い尽くし、僕たちから数m先にあるランナーの走路も視認できない。団のOBたちが人間の盾となり、身体を張って応援スペースを死守してくれている。もし外国人が見たら、新年のお祭りか何かと誤解するに違いない。

 

校歌斉唱の最中 僕らを取り囲む群衆からも、唱和する声が聴こえてくる。それも数十人規模。彼らは “ 群衆 ” なんかではなく、大学の卒業生達だと ようやく気が付きました。愛校心に年齢や立場は関係ない。この場に居合わせた人々の思いは、ひとつだった。いまだスタート前の時間なれば、選手に応援は全く届かない。では何の為の応援なのか? と問われれば、『 大学の意気を示すため 』に他ならない応援でした。

 

 

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* 頑張れ、高橋!

 

 動く宴会場 

午前 8:00 、遂に号砲が響く。選手たちが僕らの目の前を通過するまで、僅か1分前後。通過を見届けた僕らは、直ちに移動準備にかかります。選手たちよりも先に、往路ゴール地点の 芦ノ湖畔へ向かわなきゃならない。

  ・1月2日 … ① 往路スタート  ② 往路ゴール

  ・1月3日 … ③ 復路スタート  ④ 復路ゴール

参加応援団たちは、計4回応援を行う。箱根応援は移動時間との戦いです…

 

応援以外の時間、僕らは器材と共に大型バスで移動する。車内には現役団員のみならず、大勢のOBとその家族が同乗しています。朝だと言うのに、早くも酒宴が始まる…みんな笑顔です。世代を超えて集合できるこの日を、誰もが楽しんでいる。そして飲む量が尋常ではなかった。

僕の隣に座ったのは、30歳以上離れたOB。いかつい外見や豪放な言葉遣いにビビりましたが、現役時の思い出を、夢中になって語ってくれました。『 ほら、前祝いだッ ♪ 』そう言って満面の笑みで手渡されたのは、ワンカップ大関。下戸だと白状できない僕には、常温の日本酒は難敵でした。OBたちは終始 バスの車載TVにかじりつき、順位の浮き沈みに大げさな歓声と溜息を繰り返す。かつての猛者共も、いい年の重ね方をしてきたのだろう…最下級生だった僕なりに、学ぶものがあったように思います。

 

… 往路の結果は 優勝候補筆頭と目された 山梨学院と神大が、まさかの途中棄権。我が校は2位、近年なかった快事でした。首位・早稲田との差は2分程だった為、十分に逆転の射程圏内。僕ら以上に意気上がるOBたち。『 久し振りに優勝できるんじゃないか?』、誰ともなくそんな言葉が飛び交っていました。

往路応援を終えた夜は、毎年常宿にしている箱根小涌園に宿泊します。そして早朝の復路スタートに臨みます。夜の酒盛りと、OBが入浴する際の 小姓よろしき付き添いは深夜に及ぶ…

 

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 * 復路スタート地点・芦ノ湖畔にて。大手町と異なり、選手たちは手を伸ばせば届きそうな距離を駆け抜ける。